不気味なじじい前面おしの「ゲヘナ」見てきました!
作品紹介
予告
あらすじ
リゾートホテル建設の視察の為、サイパン島を訪れた土地開発会社の社員ポリーナとタイラー、現地のコーディネーターのアランとペペ、カメラマンのデイブの一行は、候補地であるジャングルに入っていく。
そこで洞穴を見つけ奥へ進んでいくと、数体のミイラ化した死体があった。そこは米軍も把握していなかった旧日本軍の秘密基地だったのだ。
さらに奥へ進んでいくと突然不気味な老人に襲いかかられ、驚いたアランは老人を突き飛ばして殺してしまう。
5人はその場所に秘められた太古から続く呪いに翻弄され、誰も予想できなかった恐ろしい結末に導かれていく。この場所に秘められた謎と、不気味な老人の正体とは…。(出典:Amazon)
所感
映画『ゲヘナ』感想と評価:特殊メイクの巨匠が挑んだ意欲作のリアルな所感
ポスターや予告編で前面に押し出されている、強烈なインパクトを放つ不気味な老人。ホラー映画ファンならずとも目を引く秀逸なビジュアルですが、実際に鑑賞してみると、率直に言って少し物足りなさを感じる部分がありました。ここでは、本作の率直な感想と、知っておくと少し見方が変わる作品の裏話をご紹介します。
ストーリー展開とキャラクター設定の惜しい点
サイパン島の旧日本軍秘密基地という舞台設定は非常に魅力的なのですが、ストーリー自体にはどこか既視感があります。ホラーやスリラーをよく見る方なら、冒頭の段階で結末の予想がついてしまうかもしれません。予想を裏切るどんでん返しを期待して最後まで鑑賞したものの、良くも悪くも王道ストレートな結末に着地してしまったのは少し残念でした。
また、登場人物たちの行動心理にも少し違和感が残ります。土地開発会社の社員など、分別のありそうなプロフェッショナルな大人たちが揃っているにもかかわらず、限られた短い時間軸の中で早々にパニックに陥り、冷静さを失って馬鹿騒ぎをしてしまいます。極限状態での飢えや疲労が蓄積した数日後の出来事であれば納得できるのですが、少し精神崩壊が早すぎる印象を受けました。
純粋なホラー作品というよりは、星新一のショートショートや『世にも奇妙な物語』に近いテイストの、奇妙で不条理なダークミステリーとして観るのが正解かもしれません。
ハリウッド一級品の造形美と名優たちの贅沢な起用
ストーリー面では少し辛口になってしまいましたが、本作の最大の魅力はなんといっても幻覚シーンなどに登場するクリーチャーや造形物の圧倒的なクオリティです。それもそのはず、本作で初監督を務めた片桐裕司監督は、もともとハリウッドの第一線で活躍する超一流の特殊メイク・造形アーティストなのです。
気になって監督の経歴や、実際にメイン講師を務められている
第一線で活躍しつつ次代のアーティストを育てるべく、講師やこういった本もだされているようです。
また並んでいる実績が想像以上に凄まじくて驚きました。私の大好きなギレルモ・デル・トロ監督作品をはじめ、マーベルやDCコミックスの大ヒット映画など、世界的な超大作で数々のキャラクタークリエイトを手がけてきた本物の職人です。
ここで一つ、映画好きなら唸るウンチクを。あのポスターにもなっている不気味な老人を演じているのは、実はデル・トロ作品でおなじみの伝説的クリーチャー俳優、ダグ・ジョーンズです。『パンズ・ラビリンス』のペイルマンや『シェイプ・オブ・ウォーター』の半魚人を演じた彼が、片桐監督の長年のキャリアと人脈によって出演を果たしています。さらに『エイリアン2』のビショップ役などで知られるホラー界のレジェンド、ランス・ヘンリクセンも参加しており、特撮・ホラーファンにとってはたまらないキャスティングとなっています。
あれだけインパクトのあるキャラクターたちに、ほぼ何もしないという贅沢すぎる無駄遣いをしている点も、ある意味でインディペンデント映画ならではの面白さと言えるかもしれません。
監督・片桐裕司の次回作に寄せる大きな期待
本作は、ホラー映画としての恐怖やストーリーの起伏においては少し肩透かしを食らう部分もありました。しかし、世界的トップクラスの特殊造形技術をスクリーンで堪能できるという点においては、間違いなく独自の価値を持った作品です。
片桐監督の持つダークで美しい造形センスを考慮すると、ストレートなパニックホラーよりも、ギレルモ・デル・トロ監督が得意とするようなダークファンタジーの世界観が非常にマッチするのではないでしょうか。ご自身の卓越した造形物の魅力が、それにハマるストーリーと完璧に融合したとき、一気に大化けするポテンシャルを秘めています。
今回の初監督という挑戦を糧に、次作でどのような驚きを見せてくれるのか、今後の活躍を大いに期待して応援したくなる才能です。
まとめ:映画『ゲヘナ』は視覚的インパクトを楽しむダークファンタジー
結論として、映画『ゲヘナ』は純粋なパニックホラーを求めるよりも、ハリウッド屈指の造形美とクリーチャーを愛でるためのダークファンタジーとして鑑賞するのがおすすめです。
最後に少しウンチクを追加しますが、タイトルの『ゲヘナ』とは、もともと旧約聖書に登場する呪われた谷、転じて地獄そのものを意味する言葉です。登場人物たちが足を踏み入れた場所がまさにゲヘナであったことを踏まえると、あの予定調和とも言える結末も、神話的な不条理劇としての説得力を持ってきます。
ストーリーの粗削りな部分は否めませんが、CG全盛の現代において、職人の手仕事が光る実物大の特殊造形物をじっくりとスクリーンで拝めるだけでも、特撮ファンにとっては十分に価値がある作品です。今後の片桐監督が作り出す新たな悪夢の世界に、引き続き注目していきましょう。
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