映画日記「来る」


「第22回日本ホラー大賞」で大賞も獲得した澤村伊智さん原作小説「ぼぎわんが、来る」を映画化したホラー「来る」見てきました!

作品紹介

予告

あらすじ

恋人の香奈との結婚式を終え、幸せな新婚生活を送る田原秀樹の会社に謎の来訪者が現れ、取り次いだ後輩に「知紗さんの件で」との伝言を残していく。知紗とは妊娠した香奈が名づけたばかりの娘の名前で、来訪者がその名を知っていたことに、秀樹は戦慄を覚える。そして来訪者が誰かわからぬまま、取り次いだ後輩が謎の死を遂げる。それから2年、秀樹の周囲で不可解な出来事が次々と起こり、不安になった秀樹は知人から強い霊感を持つ真琴を紹介してもらう。得体の知れぬ強大な力を感じた真琴は、迫り来る謎の存在にカタをつけるため、国内一の霊媒師で真琴の姉・琴子をはじめ、全国から猛者たちを次々と召集するが……。(出典:映画.COM)

所感

「澤村伊智」さん原作「ぼぎわんが来る」はすでに既読済みでとても面白かったので、期待値はありました。
ただ、「告白」や「嫌われ松子の一生」等々の「中島」監督と知り、過去作品は好きですが(特に「告白」はずんと来た!)、今作についてはあのポップな演出と合うんだろうか?という不安がすごくありました。ただ同時に、新しい演出で化学反応をおこすのではという淡い期待をもあり、その辺みきわめるべき行ってきました!

結果。
化学反応なし。
原作台無しにもほどがあるなーという最悪な印象です。

文句なく今年のワーストグループに刻まれた作品でした。

もちろん、これは原作を読んでいての過剰な期待部分が大きいといえます。
原作を読んでいなければどうかというところは私も知りたいところです・・・。

先に擁護しておくと、いつものぶつ切りカット満載で、「中島」監督らしい雰囲気はでていて、おそらく監督は自分の仕事をしただけで悪くないような気がします。

誰やねん、オファーしたん!

清水監督とか、黒沢監督とか、現実感のある抑えたホラーを撮る人にお願いしてや。

良かった点

腹のたった残念な点吐き出す前に先に褒められる点を。
よかったのは、SNS中毒夫を演じる「妻夫木聡」と、霊能者の一人を演じる「柴田理恵」。

「妻夫木聡」のほうは、さわやかな顔の裏にある、ほんとに嫌いになりそうな、やな感じがうまくでてました。

「柴田理恵」は妙にかっこよく、そのせいかどうかわかりませんが、原作ではちょい役で早々に退場するんですが、映画では最後の戦いまで参戦してました。
普通にこういうキャラの「柴田理恵」メインの作品みてみたいなーと思いました。

後原作にないけどよかったのは最後に登場する神主のおじさんたちの車中での会話とか、カプセルホテルで準備するとことかくらいかな。

残念な点(※ここからはネタバレありです)

1.二部での、一部部分の種明かしの弱さ

そもそも、この作品のは3部構成で
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一部 夫目線の導入的ホラー
二部 妻目線の1部の種証&謎解きホラー
三部 姉貴登場の、ど派手な展開
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このメリハリの利いた展開にこそ面白みが詰まっているはずです。

特に1部と2部は話が半分くらいは対になっており
「ローガン・ラッキー」のような、もしくは最近のはやりでいうと「カメラを止めるな!」のような、一つの話を別の視点から種明かしすると真反対の事象が浮かび上がってくるという面白さがあり、この部分は絶対に消してはいけない部分だと思うのです。

なのに今作は最初から、だれがみても夫が馬鹿夫であることを描写してしまうので、2部での種明かしにまったく驚かされません。

2.一部、二部と三部の対比がない。

一部、二部を現実的で抑えた演出で展開させるのに対して、3部で初めて姿を現す超人的な姉の存在で、非現実的な漫画のような展開になり、一気にラストに向かうという流れ。これが映画にはありません。

一部、二部をぐっと抑えるからこそ、際立つ三部。

先日みた「ヘレイタリー」の10分1でも、日常の不気味さを表現してくれればなーと思いました。

3.「ぼぎわん」への愛着のななさ

題名からも外さることに象徴されるように、ほぼ「ぼぎわん」という単語がでてきません。
澤村伊智さんの作品は、「ずうのめ人形」、「ししりばの家」にも見られるように、なんだかよくわらないひらがな4文字の音が不気味気持ちいい(説明しにくい感情・・)のに、ここを使わないというのは、モンブラン買ってきて栗食べない奴に対するむかつきみたいなものを感じます。

そしてなにより、あの一部の最後のシーン、馬鹿夫の目線で描かれる迫りくる「ぼぎわん」とその口!どういう感じで表現するんだろうと、凄く期待してました。

もちろん小説では想像に任されていた「ぼぎわん」を具体的に描くのは難しいでしょうし、描くことで賛否両論でるのはわかってます。なので、私は「ぼぎわん」自体を描いてくれさいすればいい。迫る大口お化けが、ばくっといかれるところを、夫目線、そしてできるならそのあと俯瞰ショット。これさえあれば、「ぼぎわん」のデザイン自体は何も言うまいと思ってました。
なのに、なんかよくわからん昔の幼馴染の幽霊のようなのが走ってくるだけ!

おいおい、ここの描写逃げるのかよ!
もこのシーンで、この作品の原作のわかってなさが決定的になった気がして、そのまま映画おわるまで印象は覆らないものとなりました。

あげく、「ぼぎわん」のことを霊とごちゃまぜにしてるような表現もあって(原作では妖怪のような異界の得体のしれない存在)イライラ増加。

4.登場人物のキャラクター設定が過剰なのに薄っぺらい

「ぼぎわん」を描かないという点と対象的に、登場人物のキャラクターや設定が過剰でかつ誇張しすぎていて、薄っぺらくみえてしまいました。
また過剰な部分、ほぼ原作にないものなので余計はらが立ちます。

特に、原作ではキー的役割をもつ夫の旧友の民族学者が、昔から夫を軽視していたとことか、根っからの悪人である点とかなんかいまいち乗れないです。

これまでもそうですが中島監督は、人の業みたいなところに焦点をあててそれをちょっと漫画的というか非現実的な感じでポップに描くことで、逆に変な怖さ不気味さを表現していたと思うのですが、この作品にの(特に一部、二部)にはそういう部分は完全にミスマッチ。

5.その他もろもろ

ほかにも、一瞬挿入される気持ち悪いサブリミナルみたいな映像とかすごく不愉快です。
少しならいいんですが、あまり多用されるとなんかいろいろごまかしているようにしか見えません。

あと、最後の子役のどうでもいいオムレツの歌カットとか、こんなとこに金使うなら、「ぼぎわん」の描写に使えよ!とさらにさらに怒りがこみ上げました。

最後にふと邪推

とにかくこの、これらの要素がないままだらだら進むので、ストーリーラインは確かに原作の「ぼぎわん」だけど、あらすじを流しているような平坦な印象を受けますし、すごくご都合主義に見えてしまいます。

「ぼぎわん」の単語や描写が少ないことに怒りと書いててふと思いましたが、意外と題名から「ぼぎわん」が外れて一番ほっとしてしてるのは、原作者かもしれないなーと思いました。もっと邪推すると、原作者自らお願いしたのでは・・
そんなことを思うほど原作わかってない感が満載の作品でした。

ということで今作の映画はまったく勧めません!
原作小説は勧めます!


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