初めての歌舞伎体験
知人に誘われて、これまでまったく興味のなかった歌舞伎を初観劇。
大阪松竹座がなくなるというきっかけがなければ、正直うん十年生きてきて2万円以上のチケットを自分で買うことはなかったと思います。
結果から言うと、食わず嫌いはもったいない。
想像していたよりずっと見やすく、そして独特の楽しさがある世界でした。
今回は昼の部で、以下の三演目を鑑賞。
・彦山権現誓助剱 毛谷村
・夕霧名残の正月
・大當り伏見の富くじ
それぞれかなり毛色が違い、歌舞伎というジャンルの幅広さを体感することになります。
彦山権現誓助剱 毛谷村 ジャンプ打切かと思う結末
最初に観た毛谷村。
これがなかなかクセの強い構成でした。
物語としては、主人公・毛谷村六輔をはじめとする登場人物たちの敵が、実はすべて同一人物だと明らかになっていき、ついに討つ決意を固める…というところで終わる。
つまり、決戦は描かれない。
ジャンプ漫画で例えるなら、敵の正体がわかって「よし倒すぞ!」で打ち切りになるような終わり方。初見だと普通にびっくりします。
ただこれにはちゃんと理由があって、この作品は全十二幕構成のうちの九段目。
いわば物語の転の部分だけを抜き出して上演しているらしいのです。
起承転結でいう転だけをいきなり見せられるので、そりゃ結末はない。
この構造を補うのが、出語りと呼ばれる三味線にのせた語り。
ただ、この語りがなかなか難解で、正直ほとんど聞き取れません。
今回はサポートイヤホンを借りていたので、解説を聞きながら理解できましたが、初見の人にはかなり重要なアイテム。これは借りるのを強くおすすめします。
一方で、役者のセリフ自体は思っていたより口語寄りでかなり聞き取りやすい。
歌舞伎=何言ってるかわからない、という先入観はいい意味で裏切られました。
ちなみに主人公の毛谷村六輔は実在人物がモデルらしく、
加藤清正の家臣で、豊臣秀吉の朝鮮出兵にも参加したとされる人物です。
しかも朝鮮側の史料では極悪人扱いされているという話もあり、こうした史実と伝承の混ざり合いも調べる手みると面白いところ。
歴史の解釈が立場によって変わるあたり、ちょっとした歴史ロマンも感じます。
夕霧名残の正月 踊りで魅せる静かな一幕
続いては夕霧名残の正月。
これは一言でいうと、完全に箸休め的な演目です。
内容としては、亡くなった遊女に恋していた男が夢の中で再会し、桜を背景に踊るというシンプルなもの。
ストーリー性はかなり薄く、むしろ舞踊そのものを楽しむ舞台です。
歌舞伎というとドラマ性の強い芝居を想像しがちですが、こうした純粋な踊りの演目もある。
ジャンルとしての幅の広さを感じるポイントでした。
正直、初見だと少し戸惑いますが、舞の美しさや所作の細やかさに目を向けると、また違った楽しみ方ができる演目です。
大當り伏見の富くじ まるで現代版・新喜劇のような爆笑舞台
最後の大當り伏見の富くじ。
昼の部メインで、これが一番印象に残りました。
もう完全にコメディ。
というか、新喜劇に見えました。
セリフはかなりわかりやすく、イヤホン解説もほぼ不要。
たまに古い言葉が出たときだけ単語の意味を補足してくれる程度で、むしろその淡々とした解説もシュールで面白い。
そして何より中村獅童が強い。
存在感と間の取り方が抜群で、とにかく笑わせてくる。
さらに驚いたのが音楽。
エレキギターやシンセサイザーなど現代的な音が使われていて、演奏というよりは流している感覚。
その中で解説が
クリーピーナッツのような音楽が流れます
と説明してくるのもなかなかカオス。
「クリーピーナッツ」のわかる年配のお客さんはどれほどいるのかとツッコミたくなります。
ラストはまるでマツケンサンバのような全員参加の踊りでフィナーレ。
古典芸能のイメージとは真逆の、エンタメ全開の楽しい舞台でした。
歌舞伎は難しいという先入観はもったいない
今回の観劇で一番感じたのは、歌舞伎は思っているよりずっと間口が広いということ。
・歴史劇のような重厚な演目
・舞踊中心の静かな作品
・現代的な笑いを取り入れたコメディ
同じ歌舞伎でもこれだけ振り幅がある。
もちろん、全部を理解しようとするとハードルは高いですが、サポートイヤホンなどの仕組みも整っていて、初心者でも楽しめる工夫はしっかりされています。
そして何より、自分一人では絶対に踏み込まなかった世界に触れられたというのが大きい。
こういう体験は、人に引っ張ってもらわないとまず起きない。
誘ってくれた知人には素直に感謝です。
歌舞伎は難しそうだからと避けている人ほど、一度は体験してみる価値がある。
そんなふうに思わせてくれる、意外性のある舞台でした。
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