作品紹介
予告
あらすじ
大恐慌時代のアメリカ、ショービジネスでの成功を夢見る、野心溢れる青年スタンがたどり着いたのは、人間か獣か正体不明な生き物を出し物にする怪しげなカーニバルの一座だった。そこで読心術の技を身につけたスタンは、人を惹きつける才能と天性のカリスマ性を武器にトップの興行師となるが、その先には想像もつかない闇が待ち受けていた…。
所感
デル・トロ流・大人のための因果応報ショートショート
ギレルモ・デル・トロといえば、『パンズ・ラビリンス』や『シェイプ・オブ・ウォーター』に見られるような、異形のもの(クリーチャー)への深い愛情がトレードマークです。しかし、本作には彼が得意とする独特のクリーチャーが一切登場しません。その代わりに描かれるのは、人間の醜さ、野心、そして逃れられない運命という、現実的な恐怖です。鑑賞後の感覚は、まるで星新一のショートショートや『世にも奇妙な物語』の長編版を観たような、心地よい後味の悪さと「因果応報」の重みが残ります。
超常現象を抑えつつも、デル・トロらしい不気味で美しいビジュアルセンスが全編を支配しており、これまでの作風とは一線を画す新境地を感じさせてくれました。
顔芸の博覧会?クセが強すぎる豪華キャスト陣
本作の最大の魅力の一つは、主役を食わんばかりの勢いで登場する「クセモノ俳優」たちの競演です。
- ケイト・ブランシェット:圧倒的な存在感。彼女が演じる精神科医の冷徹さと美しさには、観ているこちらが蛇に睨まれた蛙のような気分になります。
- ウィレム・デフォー:ハリウッドの香川照之、『スパイダーマン』のグリーン・ゴブリンでおなじみの「顔芸」が冴え渡ります。見世物小屋の興行師としての怪しさは、彼にしか出せません。
- トニ・コレット:『ヘレディタリー/継承』で見せたあの強烈な表情は健在。
実力派たちの濃すぎる演技によって、整った顔立ちの主役やヒロインが若干霞んで見えるほど。まさに俳優たちの表情だけで物語が何層にも深まっていく、贅沢な映画体験といえるでしょう。
実はリメイク!1947年版『悪魔の往く町』とのつながり
本作には原作小説が存在し、すでに1947年に
当時のハリウッドの黄金期を支えたタイロン・パワーが主演を務めましたが、今回デル・トロ監督が再映画化したことで、より現代的かつスタイリッシュな闇が強調されました。
原作はウィリアム・リンゼイ・グレシャムによるミステリで、ハヤカワ・ミステリ文庫からも邦訳が出ているため、映画を観た後に活字でその心理描写を深掘りするのも一興です。
総評:ダークな美しさと、もう一歩踏み込むための毒
物語の構成は非常に丁寧で、冒頭から張り巡らされた伏線がラストに向かって鮮やかに回収されていく様は見事です。主人公が自らの嘘に飲み込まれ、破滅へと向かっていくプロセスには、目が離せない吸引力がありました。ただ、映画ファンとしてのわがままを言えば、もう少し内臓をえぐられるような「気味悪さ」が欲しかったのも事実です。アリ・アスター監督の『ミッドサマー』のような、生理的な嫌悪感を伴う恐怖を期待すると、本作は意外にも淡泊で、洗練されすぎている印象を受けるかもしれません。
とはいえ、大人の鑑賞に耐えうる上質なサスペンスであることは間違いありません。デル・トロが描く、美しくも残酷な「ナイトメア・アリー(悪夢小路)」に、あなたも迷い込んでみてはいかがでしょうか。
0 件のコメント :
コメントを投稿