作品紹介
予告
あらすじ
所感
毒気とリアリティの絶妙なバランス
実は「ボン・ジュノ」監督の過去作、『グエムル』や『スノーピアサー』があまり合わなかったというのがあり、いまいちSF的な非日常の要素と監督のテイストはあわなかったような気がしてました。
でも今作は、その「ボン・ジュノらしさ(不気味さや皮肉)」が、現代社会というリアルな土俵で見事に弾けていた気がします。ファンタジーに逃げず、地続きの日常がじわじわと侵食されていく展開が、いい方向に作用していましたよね。
ソン・ガンホとの「名コンビ」感
主演のソン・ガンホについては、もう「監督の分身」と言ってもいいくらいの存在感でした。 実際、二人は20年来の付き合いで、プライベートでもかなり仲が良いそうです。監督は脚本を書く段階から「ここはソン・ガンホならどう動くか」を考えて当て書きしているのだとか。あの絶妙な「情けなさ」と「爆発力」をあそこまで引き出せるのは、お互いを知り尽くした戦友のような信頼関係があるからこそでしょうね。
知ると切ない「半地下(パンジハ)」の背景
劇中のシンボルである「半地下」についても、少し調べてみると面白い(そして少し重い)背景がありました。
もともとは「防空壕」だった: 1970年代、北朝鮮との緊張状態から、韓国の建築法で低層住宅には「地下室(防空壕)」を作ることが義務付けられていました。それが後に、都市部の深刻な住宅不足を解消するために居住用として解禁されたのが、今の「半地下」の始まりだそうです。
「上」でも「下」でもない境界線: 窓を開ければ通行人の足が見え、酔っ払いの排泄物が飛んでくる。完全に地下ではないけれど、日の光も中途半端にしか入らない。あの場所は、格差社会から抜け出そうとしても抜け出せない「中吊りの階級」を視覚的に表現する、最高に皮肉な舞台装置になっていました。
ネタバレ:衝撃のラストシーンが突きつけるもの
物語の終盤、華やかなガーデンパーティーが惨劇へと変わる展開は、何度見ても息を呑みます。 特に、ソン・ガンホ演じるギテクが、パク社長を刺してしまう瞬間。あそこにあったのは「怒り」というより、長年積み重なった「屈辱」の爆発でした。鼻をつまむという何気ない動作が、決定的な引き金になる。
そして本当のラスト、息子が「いつかあの家を買い取る」と誓う手紙のシーン。一見希望があるように見えますが、計算してみるとあの給料で家を買うには何百年もかかるという絶望的な現実が隠されています。結局、父は「本物の地下」に閉じ込められたままという、救いようのない結末の切れ味は凄まじかったですね。
まとめ:なぜこの映画は「特別」だったのか
結局のところ、この映画が面白かったのは、格差という重いテーマを扱いながら、一流の「エンターテインメント」として成立していたからだと思います。
笑えるのに怖い。
軽快なのに重い。
こうした相反する要素を同居させられるのが、ボン・ジュノ監督の真骨頂。過去作で感じた「違和感」が、今作では「中毒性」に変わったような感覚ではないでしょうか。ソン・ガンホという最高の相棒を得て、監督が持つ独特の毒気が、現代社会の歪みを一番いい形で描き出した一本だったと言えそうです。
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