作品紹介
予告
あらすじ
とある自主映画の撮影隊が山奥の廃墟でゾンビ映画の撮影をしていたが、そこへ本物のゾンビが襲来。ディレクターの日暮は大喜びで撮影を続けるが、撮影隊の面々は次々とゾンビ化していき……。 (出典:映画.com)
所感
300万円の奇跡!『カメラを止めるな!』が変えた日本映画の常識
映画界に激震が走りました。制作費わずか300万円、キャストも無名、当初はミニシアター数館での公開だった「
予算はハン・ソロの2秒分?上田監督のユーモアに溢れる情熱
まず監督の
特にラジオ『アフター6ジャンクション』でのパーソナリティ・宇多丸氏(ライムスター)との対談エピソードで、上田監督は、自作の制作費を当時公開中だった超大作『ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー』と比較し、「向こうの予算だと、僕らの映画は2秒しか撮れない」と茶目っ気たっぷりに語ったのです。
自分たちの「持たざる境遇」を卑下するのではなく、映画愛に溢れた極上のジョークに変えてしまう軽やかさ。そんな監督の人柄が反映されているからこそ、作品全体に手弁当的な温かさと、計算し尽くされた情熱が宿っているのだと感じます。
ミニシアターを待つはずが、まさかのシネコン最大スクリーンへ
私自身、本作については当初、全国をツアーのように巡業するミニシアターでの公演を今か今かと待ちわびていた一人でした。ところが、事態はあれよあれよという間に急変。気づけば、街で一番大きなシネコンのスクリーンで、しかも満席の観客に揉まれながら鑑賞することになってしまったのです。
本来、この映画は「低予算の和製ゾンビ映画だ」と承知の上で観に行き、その期待を良い意味で裏切られる前半・後半の落差を楽しむことこそが、真っ当な、そして最も幸福な鑑賞体験だったはず(私の決めつけです)。
それが、メディアやSNSの「前代未聞!」「全く新しい構造!」という過剰なまでの煽り文句と共に、完全にお膳立てされた大舞台で供される。
この状況には、正直なところ映画ファン特有の「ひねくれた心理」が疼かざるを得ません。
「前代未聞」の賞賛に覚える、歪んだマニアの衝動
テレビのインタビューで「こんな風に2回始まる映画、見たことない!」と無邪気に感動を語る一般客を目にするたび、内なるマニアが「いやいや、そもそも今まで一体どれだけの映画を観てきたというんだ?」と、いらぬ突っ込みを入れたくなってしまいます。
前半の物語を後半で解体し、真逆の視点を提示するプロット自体は、決して唯一無二の「発明」ではありません。演劇ではよくみかける手法ですし、映画でも『アフタースクール』や『ローガン・ラッキー』といった優れた先行例が存在します。それらを棚に上げ、あたかも人類史上初の発見かのように騒ぎ立てる世間の空気には、どうしても冷ややかな視線を送ってしまう――そんな、歪んだマニア衝動に駆られてしまうのです。
嫌な奴ですよね・・
もちろん、37分ワンカットという執念の撮影や、緻密な伏線回収には多大な拍手を送りたい。しかし、それらが「熱狂という下駄」を履かされた状態で消費され、イナゴに食い尽くされるかの如く一過性のブームで終わってしまうのは、あまりにも惜しいと感じてしまいます。
消費されない「真実の汗」を願って
『カメラを止めるな!』は、エンディングで流れる舞台裏の映像にこそ、スタッフ・キャストの「真実の汗」が刻まれています。
正直3回目の「真の舞台裏の映像」ターン37分があってもよかったのではと思えるほど。
中途半端なホラーが続く前半戦と、その先にあるカウンター気味のご褒美感。
ブームが去ったあとに、いつかフラットな視点でそのエネルギーを再確認してほしい一作です。
その時あなたは、あの最初の37分を乗り越えた先に、何を感じるでしょうか。
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