「ダウンサイズ」 | 小さくなる設定の先に、意外と重たい人生が待っていた | 原題「Downsizing」


作品紹介

予告


あらすじ

ノルウェーの科学者によって人間の身体を縮小する方法が発見され、身長180センチなら13センチにまで小さくなることが可能になった。人口増加による環境、食料問題を解決する「人類縮小200年計画」が立ち上がり、一度小さくなれば二度と戻ることはできないが、それでも各国で小さくなること(ダウンサイズ)を選ぶ人々が徐々に増えていく。アメリカのネブラスカ州オマハでストレスフルな生活を送る、どこにでもいる平凡な男ポール・サフラネックは、少しの蓄えでも裕福で幸せな生活が遅れるという縮小された世界に希望を抱き、ダウンサイズを決意。しかし、土壇場で妻のオードリーが逃げ出してしまう。ポールは縮小された人間たちの世界で、ひとり寂しい生活を送ることになり、自暴自棄になるのだが……。

所感

小さくなる設定の先に、意外と重たい人生が待っていた

マット・デイモン主演ということで、公開当時はなんとなく気になっていた作品。
しかも個人的にはオデッセイがかなり良かったので、その流れで特に身構えず鑑賞しました。

世間ではわりと酷評も多かった印象なんですが、個人的にはかなり好み。
派手に盛り上がるタイプではないものの、じわじわ効いてくる面白さがありました。

ただし、いわゆる小さくなって虫や小動物に追われるみたいな映画を期待すると、ちょっと肩透かしをくらうかもしれません。
この作品、前半こそ設定勝ちのSFコメディっぽいんですが、後半になるとかなり別の顔を見せてきます。

そこが面白さでもあり、惜しさでもある映画でした。

小さくなることで人生をやり直すSF

この映画の設定はかなり面白いです。
人類は身体を小型化する技術を開発し、環境問題や資源問題の解決策として、小さく生きるという選択肢を手に入れる。

しかも小さくなることで、普通の資産でも相対的に大金持ちのような暮らしができる。
要するに、現実ではしんどい人生でも、縮小世界に行けば一発逆転できるかもしれないという話です。

この発想はかなりうまい。
単なる珍設定ではなく、現代の格差社会とか消費社会への皮肉もちゃんと入っている。
小さくなるというSF的ギミックを使って、夢の新生活を描く前半はなかなか楽しいです。

このへんを見ていると、もっとどんどん小さな世界ならではのネタが続いていくのかなと思わされます。

前半はかなり好みのSFコメディ

前半はかなり面白いです。
小さくなること自体のインパクトもあるし、そこに人間の欲や見栄が乗っかってくるのが良い。

結局人間って、サイズが変わっても考えることはそんなに変わらないんですよね。
贅沢したいとか、少しでも得したいとか、今よりいい暮らしをしたいとか、そのへんは実に生々しい。

この作品の面白いところは、縮小化というとんでもない未来技術を扱っているのに、やっていることは妙に俗っぽいところです。
そのアンバランスさがコメディとして効いています。

もしこの路線のまま最後まで突っ走ってくれたら、それはそれでかなり好きな作品になっていた気もします。

後半でぐっと別の映画になっていく

ただ、この映画は途中から少しずつ空気が変わっていきます。
小さくなることの面白さそのものよりも、その世界の中でどう生きるか、人とどう関わるかという話に重心が移っていく。

ここが本作の評価が分かれるポイントだと思います。

SFコメディとして見ていると、後半はちょっと肩透かしにも感じる。
もっと小さくなったことで起きるトラブルや恩恵、あるいはミニチュア世界ならではの発想を見たかった気持ちはかなりあります。

でも一方で、この後半があるから単なる変わり種SFで終わっていないのも事実。
むしろ監督としては最初からそっちが本題だったのかもしれません。

つまりこの映画、縮小化は派手なアイデアではあるけれど、最終的には人生とか格差とか救いみたいな、かなり人間くさい話に着地していくんですよね。

小さくなる設定が薄れていく惜しさ

個人的に一番惜しいと思ったのはここです。
せっかく小さくなるという強い設定があるのに、後半になるとその意味が少し薄まっていく。

極端な言い方をすると、後半は別に小さくならなくても成立しそうな人間ドラマにも見えてきます。
もちろん世界観としては縮小社会のままなんですが、物語の軸がそちらから少し離れていく印象がある。

なので、最初に期待したものと、最後に見せられるもののあいだにズレがある。
ここをどう受け取るかで評価が変わりそうです。

ただ、このズレ自体は嫌いではありません。
むしろ、よくある設定勝ち映画で終わらず、途中から別のテーマを持ち込んでくる感じはわりと面白い。
惜しいんだけど、その惜しさも含めて印象に残る作品でした。

ホン・チャウがとにかく強い

この映画でかなり印象に残ったのがホン・チャウです。
登場してから一気に映画の空気を持っていく感じがあって、とても良かった。

ちょっと癖のあるキャラクターなんですが、その癖の強さが単なる変な人で終わっていない。
雑に言うと、この映画の後半を引っ張っているのはかなり彼女の力です。

タイの難民キャンプ内生まれというバックグラウンドも、難民役のリアルさに繋がっているように感じます。

マット・デイモン演じる主人公が、どこか流され気味というか、受け身っぽく見えるぶん、彼女の存在感がより際立つ。

このバランスはなかなか面白かったです。あと、クリストフ・ヴァルツも相変わらず良い味を出していて、この人が出てくるとちょっと作品の空気が締まる。

このへんのキャストの強さも、本作の見どころだと思います。

SFというより社会風刺とヒューマンドラマの映画

ダウンサイズは、宣伝や設定だけ見るともっと軽い作品に見えます。
でも実際に見てみると、かなり社会風刺寄りです。

環境問題、貧富の差、消費社会、そして結局人間はどこへ行っても人間のまま、みたいな話がじわじわ入ってくる。
このへんはなかなか意地が悪くて好きでした。

小さくなれば幸せになれるかというと、そんな単純な話ではない。
住む場所を変えても、身体のサイズを変えても、人間の孤独や不安や欲望はそう簡単には消えない。

そういう意味では、本作はSFの皮をかぶったヒューマンドラマなのかもしれません。
そこを面白いと思うか、設定をもっと活かしてほしかったと思うかで、印象がかなり変わる作品です。

まとめ|惜しいけれど、じわっと面白い異色SF

ダウンサイズは、万人向けに分かりやすく面白い映画かと言われると、ちょっと違う気がします。
前半と後半でかなり印象が変わるし、小さくなる設定を期待すると物足りなさもある。

でも個人的には、かなり好きなタイプの作品でした。
設定の面白さで引っ張るだけで終わらず、そこから人間の話に着地していくところが面白い。

惜しい。
でも、その惜しさごと記憶に残る映画です。

小さくなるというSF設定に惹かれる人はもちろん、少し変わった社会風刺や、じんわりしたヒューマンドラマが好きな人なら意外と刺さるんじゃないかと思います。

派手ではないけれど、見終わったあとにじわっと残る。
そんな不思議な一本でした。

0 件のコメント :

コメントを投稿