「ベニチオ・デル・トロ」が渋すぎる「ボーダーライン」みてきました。
あらすじ
巨大化するメキシコの麻薬カルテルを殲滅するため、米国防総省の特別部隊にリクルートされたエリートFBI捜査官ケイトは、謎のコロンビア人とともにアメリカとメキシコの国境付近を拠点とする麻薬組織撲滅の極秘作戦に参加する。しかし、仲間の動きさえも把握できない常軌を逸した作戦内容や、人の命が簡単に失われていく現場に直面し、ケイトの中で善と悪の境界が揺らいでいく。(出典:Amazon)
所感
圧倒的な緊張感が全編を支配する
最初から最後まで、ずーっと胃のあたりがキュッとする。
銃撃戦や爆発で煽るタイプではなく、「何かがおかしい」「でも止まらない」という不穏さで観客を締め上げてくるサスペンスです。
デニ・ヴィルヌーヴ監督らしい、静かで冷たい画作りと間の使い方がとにかく効いていて、気づけば身を乗り出して見てしまう。
派手さよりも重さで勝負する映画ですが、これがまあ、めちゃくちゃ面白い。
置いていかれる主人公
物語は、エミリー・ブラント演じるFBI捜査官ケイトの視点から始まります。
彼女は本来なら凄腕のはずなのに、米国防総省直轄の極秘部隊に放り込まれた瞬間、完全に『素人扱い』。
何が目的なのか、誰が味方で誰が敵なのかもわからない。
観客も彼女と同じ情報量で状況を眺めることになるので、序盤はずっと足元が不安定な感覚が続きます。
この「主人公なのに主導権がない」構造がまず最高。
ヒーロー映画に慣れた感覚を、いきなり否定してくるのがたまりません。
いつの間にか視点を奪っていく「謎の男」
物語が進むにつれ、捜査に同行する謎のコロンビア人の存在が徐々に浮かび上がってきます。
彼の正体が明らかになるにつれて、気づけばストーリーの重心はケイトから彼へと静かに移っていく。
ここが本作のいちばん痺れるところ。
「視点が移る」というより、「奪われる」感覚に近い。
観客自身も、いつのまにか彼の行動を追い、彼の選択を理解しようとしている。
この構造の切り替えが本当にうまい。
ベニチオ・デル・トロという存在
その謎の男を演じるのが、ベニチオ・デル・トロ。
もう存在感がどうこうというレベルじゃありません。
以前『ドライヴ』を観たとき、
「あれはライアン・ゴズリングのための映画だ」と感じた人も多いと思いますが、
本作もまさにそれ。
これは完全に、
ベニチオ・デル・トロのための映画で、彼でなければ成立しなかった一本。
多くを語らず、表情と佇まいだけで背負っている過去と覚悟を伝えてくる。
ラストに向かうにつれて、その重みが一気に観客に突き刺さります。
「Sicario」という原題が示すもの
原題の「Sicario」はスペイン語で
「殺し屋」「暗殺者」という意味。
これを知った上でラストまで観ると、
「ああ、そういうことか」と腑に落ちる。
邦題の『ボーダーライン』も、
国境線と、善悪・正義と暴力の境界線を重ねたタイトルとして悪くはありません。
ただ、監督が本当に描きたかった核心は、やはりこの「Sicario」という言葉に集約されているように思います。
正義のためなら、どこまで踏み越えていいのか。
そして、その線を越えた者は何者になるのか。
まとめ:超おすすめの、胃にくる良質サスペンス
派手な娯楽作ではないけれど、
緊張感、脚本、配役、演出、すべてが高水準で噛み合った良質サスペンス。
映画館じゃなくてもいい。
でも、途中でスマホを触りながら観るような映画ではありません。
静かに、じっくり、覚悟して観てほしい一本。
間違いなく、超おすすめです。
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