映画日記「第9地区」 |汚れかっこいいの極致!映画「第9地区」が描く泥臭いSFの魅力|原題:District9


南アフリカ出身の新人ニール・ブロムカンプ監督の「第9地区」見てきました!

作品紹介

予告


あらすじ

エイリアンが飛来したヨハネスブルグ。彼らは抵抗するでもなく、市街から離れたスラム地区に隔離されてしまう。そして今ひとりの人間が、この地球外生命体の謎に包まれた兵器テクノロジーに遭遇する。エイリアンが住み着く貧民窟、その異界と化した路地裏を追われ(狩られ)ながら、男はやがて、人類にとって今やアウトサイダーである己の運命を悟ることになる。(出典:Amazon)

所感

汚れかっこいいの極致!映画「第9地区」が描く泥臭いSFの魅力

映画「第9地区」は、いわゆるハリウッドが描きがちな光沢感あふれるハイテク世界とは真逆を行く作品です。むしろその魅力は、徹底的に作り込まれた汚れた世界観にあります。これがハマる人にはとことん刺さるし、ダメな人にはとことんダメ。かなり好き嫌いが分かれるタイプの異色SFと言えるでしょう。

プラモのウェザリングに魂を売った人ならわかる快感

子供の頃にプラモデルを楽しんでいた人なら、共感してもらえるかもしれません。最初はただ組み立てて満足していたのに、そのうち色を塗り出し、さらに進むと汚し始めませんでしたか?

サビを表現し、泥を跳ねさせ、装甲が焼けた質感を出す。いわゆるウェザリング(汚し塗装)です。あれにハマるかどうかで、その後のオタクとしての深みがだいぶ変わる気がするんですよね。

「第9地区」は、まさにあの汚し塗装の気持ちよさを映画というフォーマットで爆発させたような作品です。単に不衛生でリアルなだけでなく、映像の隅々まで意図的に、美学を持って汚されている感じがたまりません。

ヨハネスブルクという舞台が生んだ唯一無二の空気感

物語の舞台は南アフリカのヨハネスブルク。ニール・ブロムカンプ監督自身がこの地の出身であることもあり、設定の説得力が段違いです。

南アフリカといえば、避けて通れないのがアパルトヘイト(人種隔離政策)の歴史。本作では、地球に飛来した宇宙人をエビのような姿のエイリアンとして描き、彼らをスラムに隔離することで、現実の社会問題を鮮烈にメタファーとして落とし込んでいます。

とはいえ、小難しい説教が延々と続くわけではありません。ドキュメンタリー風の揺れるカメラワークとテンポの良い展開によって、極上のエンターテインメントとして成立させているのが、この映画の驚くべき手腕です。

全編これ「汚物」なのに、なぜか最高にクール

この映画、とにかく出てくるものが全部汚いです。

  • エイリアンは甲殻類っぽくてヌメヌメしている

  • 彼らが住む第9地区は完全に荒廃したスラム街

  • 登場する兵器やパワードスーツもボロボロで使い古されている

それなのに、画面から目が離せなくなるほどカッコいい。この感覚は、光沢感あふれるハイテク世界では絶対に味わえません。グロテスクさと美しさが紙一重のところで成立している、この絶妙なバランス感覚こそがブロムカンプ節の真骨頂です。

ちなみに、この独特のビジュアルを支えたのは「ロード・オブ・ザ・リング」などで知られるWETAデジタル。アカデミー賞の視覚効果賞にノミネートされたのも納得のクオリティです。

主人公ヴィカスの変化が突きつけるもの

主人公のヴィカスは、最初はどこにでもいそうな、少し頼りない役人として登場します。しかし、あるアクシデントをきっかけに彼の身体と運命は激変していきます。

この変化が単なるSF的な身体変容ギミックに留まらず、昨日まで差別していた側に自分が回ってしまうという、視点の逆転を強制的に体験させる仕掛けになっています。見ているこちらの倫理観までじわじわと侵食されていくような感覚は、本作ならではの面白さです。

結論:あの頃の汚しに目覚めた全大人たちへ

「第9地区」は、汚れかっこいいを全力でやりきった傑作です。光沢感あふれるハイテク世界や、王道のヒーローものを期待すると火傷するかもしれません。

とにかく汚いし、グロいし、リアルすぎる。でも、その泥臭さの中にこそ宿る本物のリアリティと社会風刺、そして何より純粋なメカニックの格好良さがあります。

かつてプラモの筆を握り、サビの一筆に魂を込めた経験がある人なら、画面の隅々まで堪能できるはず。あの頃の情熱を覚えているなら、ぜひ一度この泥沼に足を踏み入れてみてください。

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