作品紹介
予告
あらすじ
1975年にホドロフスキーによって企画されたSF大作で、スタッフにバンド・デシネのカリスマ作家メビウス、SF画家のクリス・フォス、『エイリアン』『トータル・リコール』の脚本で知られるダン・オバノン、画家、デザイナーのH・R・ギーガー、キャストにサルバドール・ダリ、ミック・ジャガー、音楽にピンク・フロイド等、驚異的な豪華メンバーを配するも、撮影を前にして頓挫した。関係者のインタビュー、膨大なデザイン画や絵コンテなどの資料で綴る、驚愕、爆笑、感涙のドキュメンタリー。(出典:Amazon)
所感
映画史最大の未完成プロジェクトを追うドキュメンタリー
面白い。とにかく面白い。そして観終わったあとにまず思うのは、なぜこれが実現しなかったのか、という悔しさです。
本作は、鬼才アレハンドロ・ホドロフスキーが1970年代に企画した映画版DUNE、その幻のプロジェクトを追ったドキュメンタリー。SF映画史における伝説のひとつを、本人の熱量そのままに語り尽くしてくれます。
ホドロフスキーといえば、エル・トポやホーリー・マウンテンといったカルト的傑作で知られる監督。その彼が手がけようとしたDUNEは、いわゆる原作の映像化という枠を完全に超えた、精神世界と芸術の融合のような作品でした。
本人いわく、映画ではなく予言。この一言だけでも、どれだけ規格外の企画だったかが伝わってきます。
天才たちが集結した狂気のチーム
そして何より驚かされるのが、その制作メンバーの顔ぶれです。ダン・オバノン、H・R・ギーガー、クリス・フォスといった後のSF映画を支えるクリエイターたちに加え、キャストにはサルバドール・ダリ、ミック・ジャガーまで名前が並ぶというとんでもない布陣。
映画というよりも、ひとつの芸術運動を作ろうとしていたようなスケール感です。
ダリの出演条件がとんでもなく高額だったり、それをどうにか成立させようとするエピソードなど、裏話のひとつひとつが濃すぎて思わず笑ってしまうほど。
ただ、それを本気でやろうとしていた熱量こそが、このプロジェクトの魅力です。
ダン・オバノン(脚本・特殊効果)
ホドロフスキーに「特殊効果の責任者」として引き抜かれた人物です。
『DUNE』での役割: 視覚効果の演出。ホドロフスキーは彼を「魂の兄弟」のように感じ、ハリウッドからパリへ呼び寄せました。
その後への影響: 『DUNE』が頓挫した後、彼は無一文でアメリカに戻り、友人のロナルド・シャセットと共に映画『エイリアン』の脚本を書き上げます。
特徴: 狂気的なまでの完璧主義者。ジョン・カーペンター監督の『ダーク・スター』で見せたチープながらも独創的なセンスが、ホドロフスキーの目に留まりました。
H・R・ギーガー(造形・デザイン)
スイス出身の画家で、唯一無二の「バイオメカニカル」なスタイルを持つ芸術家です。
『DUNE』での役割: 悪役ハルコンネン家の本拠地「城」や、その不気味な世界観のデザインを担当。
その後への影響: ダン・オバノンの紹介でリドリー・スコット監督と出会い、『エイリアン』のクリーチャー・デザインを担当。アカデミー視覚効果賞を受賞しました。
特徴: 性的なメタファーと機械、有機物を融合させた、悪夢のようなビジュアル。ホドロフスキーは彼の絵を「病んでいるが、あまりに美しい」と評しました。
クリス・フォス(SFイラストレーター)
多くのSF小説の表紙を手がけていた、イギリスの伝説的イラストレーターです。
『DUNE』での役割: 宇宙船や巨大な建造物のデザイン。
その後への影響: 『DUNE』での彼のカラフルで巨大な宇宙船の概念は、後に『スーパーマン』や『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』など、多くのSF作品のインスピレーションの源となりました。
特徴: それまでの「ロケット型」の地味な宇宙船ではなく、極彩色で巨大な、まるで生き物のようなマシンを描くのが得意です。ホドロフスキーは「動く建築」を求めて彼を採用しました
実現しなかったからこそ残った影響力
結局このDUNEは資金面などの問題で頓挫してしまいます。しかしここからが本当に面白いところで、この企画に集まった人材やアイデアは、その後の映画史にしっかりと受け継がれていきます。
特にエイリアンへとつながる流れは有名で、オバノンやギーガーの参加によって、まったく別の形でこのDUNEの遺伝子が残ることになります。
存在しなかったのに、影響だけは確実に残した映画。これほどロマンのある話はなかなかありません。
映画好きなら避けて通れない一本
観ていると、もし完成していたらどんな映画になっていたのか、想像が止まりません。そして同時に、映画というものがどれだけ多くの才能と偶然の重なりでできているのかを強く感じさせられます。
豪華すぎるメンバー、暴走気味のビジョン、そして未完成という結末。そのすべてがひとつの作品として成立しているのがこのドキュメンタリーのすごいところ。
映画好きなら絶対に観ておくべき一本です。むしろ観ていないと損をしていると言っていいレベルの作品です。
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